またまた牛肉の偽装が発覚した。今度は、岐阜県のブランド牛肉の飛騨牛である。疑惑の「丸明」は飛騨牛の有名な販売店でもあり、飲食店でもある。「格付等級偽装」「産地偽装」「消費期限の改竄(かいざん)」「個体識別番号偽装」の疑いがあるが、元従業員の証言によると「消費期限が10日ほど切れ、肉の周りが変色したすね肉を、周りを包丁で削って混ぜたこともあった」という。偽装の手口といい、社長の言動といい、どうしてもミートホープとだぶってしまう。
今までになかった新たな手口は、格付等級の低い肉を高い肉と偽ったことである。格付等級とは、牛肉を取引する際の目安となるランクである。
牛肉が枝肉になる際、日本食肉協会の格付員と呼ばれる牛肉の肉質を見分けるプロがランク付けを行っている。国産牛は、100%ではないが、歩留(ぶどまり)等級(枝肉から骨を取り除きどのくらいの肉が取れるかの優劣)のA、B、Cの3ランクと、肉質等級(脂肪交雑=霜降度合、肉の色・光沢、肉のきめと締まり、脂肪の色沢・質)により1~5まで格付けされている。5が最上級である。
枝肉全体にランクが付けられるので、すべての部位が「A-5」といった格付等級で売買される。この格付けにより、取引価格が決定されているといってよい。等級が高いほど販売価格が高くなるが、ブランド牛の定義にも大きく関係している。松阪牛は1~5すべての等級が認められているが、飛騨牛は3~5等級、仙台牛は4~5等級のみと、ブランドによって定義は異なっている。
ブランド牛になれば等級による価格差も大きく、等級を偽れば当然利益は大きくなる。すべては「何もわからない消費者をだまして儲(もう)けたい」だけである。
格付等級は、法律で定められているわけではなく、表示義務もない。しかし、業界基準として定着しており、取引価格の目安になるので、安い肉を高い肉と偽って販売すれば、景品表示法や不正競争防止法などに違反する可能性が高い。
地方の名士とされながら従業員に責任を転嫁する経営者は、ミートホープ、赤福、船場吉兆も同じであった。情けないというより見苦しいの一言である。
「石川や浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」とは石川五右衛門の名言だが、もういい加減に偽装は終わりにしてほしいものだ。(食品問題評論家 垣田達哉)
産経ニュース