食の安全性への関心が高まっているが、茨城県稲敷市の「有機栽培あゆみの会」は、一貫して安全な野菜づくりにこだわる生産者団体だ。平成元年にわずか3人で結成され、現在約160人の農家が参加している。
米やニンジンなどの野菜など約100種類の農作物を生産。「有機農業により自然環境の安全性を高め、自然の物質循環や生命循環を学び、農業の本質を探究すること」などを基本理念に掲げている。土壌分析、作物の栄養分析、有害物質分析などを行い、安全でバランスのとれた土壌づくりを行って生産性を高めているのだ。
同会の斉藤公雄代表(55)は「化学肥料は使いません。農薬も極力避けた環境保全型農業です。虫は手でつぶしたり、安全な微生物農薬を使っています」と語る。有機栽培の作物というと、形がいびつだったり、虫食いがあったりというイメージがあるが、決してそうではない。「生産技術が上がり、見栄えもよくなった」と斉藤さん。
同会ではスーパーや都内のデパートなどに卸しており、農家も安定した収入が得られているという。そのため「農家には農協が金を貸すものと思われていますが、われわれには銀行や信用金庫が貸してくれます」と斉藤さん。後継者不足が深刻な問題となっている農家だが、同会の農家は経済的に安定しているため、7割は後継者がいる。
斉藤さんは農業法人「アグリクリエイト」の社長としての顔を持つ。主な事業は米や野菜の卸売業だが、注目したいのは食品リサイクル事業だ。スーパー、レストラン、給食センターに生ゴミ処理機を販売。販売した事業所から処理機で乾燥させた生ゴミを回収し、肥料化している。
「生ゴミをうまく循環させるには、肥料として再資源化し、畑に戻すのが一番。私たちは生産現場で循環型社会づくりを考え実践しています」
すでに100を超える企業や地方自治体と契約し、乾燥生ゴミを集めている。
肥料だけでなく、家畜用の飼料としても利用を模索している。すでに飼料化は完成しているが、「まだ生ゴミの回収が少ない。もっと集まれば飼料にまわすことができます」ともどかしそうだ。
バイオ燃料の需要の影響で飼料用トウモロコシの価格が上がっている。「われわれの活動が浸透すれば、飼料問題が解決し、明るい未来が開けると思います」
産経ニュース