食品の偽装表示や毒物の混入などで、食の安全が脅かされているなかで、有機・低農薬農産物への関心が高まっている。安全な野菜の生産と供給をめぐる取り組みを報告する。(渋沢和彦)
東京都港区芝公園に本社のある「らでぃっしゅぼーや」は、東京・大阪・名古屋・札幌など大都市を中心に、安全を売りにした食品を宅配するサービスを行っている。国産にこだわり、全国の契約農家から安全な食材を食卓に届けることで、業績を伸ばしている。
同社は環境NPO「日本リサイクル運動市民の会」を母体にした企業で、昭和63年から宅配事業をスタートさせた。会員数は当初3000世帯だったのが、この1、2年で顕著に伸び、現在9万世帯が契約。この数カ月は前年同月比80%増が続いている。緒方大助社長は「安全な食に対する消費者の関心が高くなった」と話す。
契約農家は当初300軒だったのが、現在は2100軒に増加。「契約農家は、農薬などの使用を厳しく規制したわが社独自の規制をクリアしています」と緒方社長は胸を張る。
一軒一軒の農家と契約を結ぶのではなく、地域でグループを結成してもらい効率的に農産物を調達する。有機肥料や機械の調達まで共同だから、多額の投資を個人の農家が負担する必要はない。「みな農業だけで生活ができ、かっこよくやっていますよ」
消費者に安全性を知らせるため、生産者と消費者が交流する「産地交流会」も年間数十回開催。実際に地方の生産地へ行き、どのような環境で作物がつくられるのか見学し、生産者と交流する。「除草剤を使わないので田んぼにはいろんな生き物がいる。お子さんもお父さんも喜んで観察しています」。またトウモロコシ畑では、トウモロコシを生のままかじる人もいるそうだ。
「らでぃっしゅぼーや」は届けるだけで終わりではない。家庭の生ゴミを回収するシステムを平成13年からスタートさせている。
専用の乾燥機で生ゴミを乾燥させ、配送スタッフが回収。有機肥料として各地域の生産者の畑に戻される。「増え続けるゴミを減らしたいという思いから始めました。消費者が参加する資源循環システムです」
7万円ほどの乾燥機を自己負担で買わなければならないためか、消費者の参加はまだ1700世帯にとどまっているが、「地球にやさしいのは明らか。普及活動を続けたい」と緒方社長は意欲を燃やしている。
産経ニュース