1.概要
■名称等
コエンザイムQ10は肉類や魚介類などの食品に含まれている脂溶性の物質で、ヒトの体内でも合成されています。
また、生物界に広汎に(=ユビキタス;ubiquitous)分布するキノン構造を有する物質であることから、ユビキノン(ubiquinone)と呼ばれることもあります。
コエンザイムQ10はビタミンではありませんが「ビタミン様物質」として知られています。
コエンザイムQ10がビタミンでないのは、体内でも合成され、「微量で体内の代謝に重要な働きをしているにもかかわらず自分で作ることができない化合物」というビタミンの定義に当てはめることが適当ではないからです。
コエンザイムQ10の「10」という数字は構造中のイソプレンという化学構造の繰り返し数を表しています。
1つのイソプレンは5個の炭素からできており、10個のイソプレンは50個の炭素数になることから、コエンザイムQ10をコエンザイムQ(50)と表示することもあります。
■体内における合成・分布と働き
食事から摂取したコエンザイムQ10は小腸で吸収された後リンパ管を経由して血流に入ります。
その吸収率は低く、摂取した量の60%は吸収されずに排泄されるという報告があります。
また摂取した量の3%が血漿に分布するというデータがあります。
また、コエンザイムQ10は脂溶性のため、空腹時よりも脂肪の多い食事と共に摂取するとより吸収率が高まると言われます。
コエンザイムQ10はヒトの体内でも合成されます。
コエンザイムQ10のベンゾキノン環の部分はアミノ酸であるチロシンから、イソプレン側鎖の部分はアセチルCoAを経由してメバロン酸から合成されます。
なお、このイソプレン側鎖が合成される過程はコレステロール合成系と共通しています。
コエンザイムのイソプレン側鎖の長さは生物によって異なり、ヒトやウシでは10個のイソプレン単位をもつため、Q10と呼ばれています。
体内においてコエンザイムQ10は、呼吸活性の高い組織である心臓や、肝臓、膵臓、腎臓、副腎などに多く含まれています。
細胞内では主にミトコンドリア内膜、血液中ではLDLなどのリポタンパク質に結合して存在しています。ヒト組織中でのコエンザイムQ10は脳と肺以外では還元体(ユビキノール)の形態をしています。
西欧型の食生活をしているときの食事からの平均摂取量は一日当たり5-10mg、そのときの血漿中のコエンザイムQ10は40%が食事由来、その他の60%は体内で合成されたものと見積もられています。
医薬品や健康食品に配合されているコエンザイムQ10は現時点ではテンサイやサトウキビを原料とし、酵母および微生物による発酵や化学合成により製造されています。
コエンザイムQ10の体内における働きは、電子伝達系における補酵素(コエンザイム)として体内のエネルギー単位であるATP(アデノシン三リン酸)の産生に関与することです。また抗酸化物質としても注目されています。